8万8968人で過去最高|静岡県の外国人労働者数と企業が取るべき採用戦略
静岡県で働く外国人労働者は、2025年10月末時点で8万8968人となり、過去最高を更新しました。外国人雇用は一部の大企業や製造業だけの話ではなく、県内の中小企業にとっても現実的な採用手段になりつつあります。ただし、人手不足だからという理由だけで採用を急ぐと、在留資格の不一致、業務上の意思疎通、早期退職などの問題につながる可能性があります。本記事では、静岡県の最新統計を基に、外国人雇用が広がる背景と、採用前に整えるべき受け入れ体制を解説します。
静岡県の外国人労働者数が過去最高の8万8968人に
静岡労働局が公表した「外国人雇用状況」の届出状況によると、2025年10月末時点の静岡県内の外国人労働者数は8万8968人でした。前年より7408人増え、増加率は9.1%です。
外国人労働者数は13年連続で増加し、過去最高の更新は11年連続となりました。全国の都道府県と比較しても、静岡県の外国人労働者数は全国7位です。
- 外国人労働者数:8万8968人
- 前年からの増加数:7408人
- 前年比:9.1%増
- 外国人を雇用する事業所数:1万967所
- 外国人労働者数の全国順位:7位
外国人を雇用している県内の事業所数も、前年から732所増加して1万967所となりました。こちらも過去最高です。外国人労働者数だけではなく、外国人採用に踏み出す事業所そのものが増えていることが分かります。
特に注目したいのが、外国人を雇用する事業所のうち、従業員30人未満の事業所が64.7%を占めている点です。外国人採用は、資金や人員に余裕のある大企業だけが行うものではありません。すでに県内の小規模事業所や中小企業にも広がっています。
また、在留資格別では「専門的・技術的分野の在留資格」に該当する外国人労働者が2万230人となり、前年から21.5%増加しました。この区分には、技術・人文知識・国際業務をはじめ、経営・管理、研究、教育、介護、特定技能などが含まれています。
外国人雇用は一時的な流行ではなく、静岡県の雇用市場を構成する重要な要素になっています。今後採用を検討する企業には、外国人を採るか採らないかだけではなく、どのような人材を、どの業務で、どの在留資格に基づいて採用するのかを判断する力が求められます。
製造業だけではない|県内で外国人雇用が広がる背景
静岡県では、自動車、輸送用機械、電気機械、食品、化学などの製造業が地域経済を支えてきました。そのため、外国人雇用も製造業を中心に進んできた歴史があります。
最新の統計でも、外国人労働者の36.7%が製造業で働いています。しかし、外国人雇用が増えているのは製造業だけではありません。
外国人労働者数の前年比増加率を見ると、医療・福祉は29.4%増、宿泊業・飲食サービス業は18.8%増となっています。外国人を雇用する事業所数では、建設業が12.0%増、卸売業・小売業が10.5%増となりました。
県内の幅広い業種で外国人雇用が進んでいる背景には、次のような事情があります。
- 少子高齢化によって若年層の採用が難しくなっている
- 求人を出しても応募者が集まりにくい
- 採用できても短期間で退職してしまう
- 専門知識や技術を持つ人材が不足している
- 海外取引や外国人顧客への対応が増えている
- 日本国内で転職を希望する外国人材が増えている
特に中小企業では、採用担当者を十分に配置できず、求人広告の作成、応募者対応、面接、入社手続を少人数で行っているケースも少なくありません。その状態で日本人の応募を待ち続けても、必要な人材を確保できないことがあります。
一方、日本国内には、日本語を学び、専門学校や大学を卒業し、在留資格を取得して働いている外国人がいます。すでに国内企業での勤務経験を持ち、転職によるキャリアアップを希望する人材もいます。
こうした国内在留の外国人材は、日本での生活経験があり、職場文化や基本的なルールを理解している場合があります。企業が求める業務経験や日本語力と合致すれば、不足する専門人材を補う正社員採用の選択肢になります。
ただし、外国人労働者数が増えているからといって、採用すれば必ず人手不足が解消されるわけではありません。重要なのは人数ではなく、自社の業務と人材の能力、在留資格、本人の希望が合っているかです。
「人手不足だから採用する」だけでは失敗する理由
外国人採用で起こりやすい失敗の一つが、採用すること自体を目的にしてしまうことです。「求人を出しても日本人が来ない」「すぐに働けるなら誰でもよい」という考えで採用を進めると、入社後に問題が表面化する可能性があります。
仕事内容と在留資格が一致していない
外国人は、保有する在留資格によって就労できる業務が異なります。例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、専門的な知識や技術を必要とする業務を対象とする在留資格です。
採用時に予定していた専門業務ではなく、実際には単純作業を中心に担当させるなど、在留資格で認められた活動と実際の業務が一致していない場合は、適正な雇用とはいえません。
企業は、在留カードの有効期限だけを見るのではなく、在留資格、就労制限の有無、資格外活動許可の内容、実際に担当してもらう業務との適合性まで確認する必要があります。
日本語能力を資格だけで判断してしまう
日本語能力試験の級は、候補者の日本語力を判断する一つの材料です。しかし、試験の級だけで、職場で必要な意思疎通能力を完全に判断することはできません。
日常会話ができても、専門用語、安全上の指示、顧客対応、電話応対、報告書の作成が難しい場合があります。反対に、資格を取得していなくても、実務経験が豊富で会話力の高い人材もいます。
採用面接では、実際の業務を想定した質問を行い、指示の理解、報告の仕方、質問する力、読み書きの能力を確認することが重要です。
労働条件や職場ルールの説明が不足している
給与、残業、休日、昇給、配置転換、試用期間、寮費などについて、企業側と外国人材側の認識が異なると、入社後の不満や早期退職につながります。
日本人社員にとっては常識と思える職場ルールでも、外国人材にとっては説明されなければ分からないことがあります。始業時刻、報告・連絡・相談、服装、安全管理、欠勤時の連絡方法、会社設備の使用方法などは、最初に明確に伝える必要があります。
ルールを曖昧にしたまま受け入れ、問題が起きてから「外国人だから仕方がない」と考えるのは適切ではありません。採用する側が基準を示し、理解できるように説明し、守れている人を正当に評価することが、職場の秩序と定着を守ります。
採用後の担当者が決まっていない
採用手続までは人事担当者が対応していても、入社後は現場に任せきりになるケースがあります。誰に質問すればよいか分からず、不安や不満を抱えたまま働く状態が続くと、小さな問題が退職につながることがあります。
外国人採用を成功させるには、採用担当者だけではなく、配属先の責任者や教育担当者にも、採用目的と人材の経歴、担当業務、在留資格の範囲を共有しておく必要があります。
外国人採用で企業が準備すべき5つの受け入れ体制
外国人材に長く活躍してもらうためには、特別扱いをすることよりも、採用条件と職場のルールを明確にし、適切に教育できる体制を作ることが重要です。
1.在留資格と就労可能な業務を確認する
採用前に、在留カードの表面と裏面を確認し、在留資格、在留期間、就労制限の有無、資格外活動許可欄を確認します。
厚生労働省は、外国人を雇い入れる際、在留カードや旅券などによって就労が認められるか確認するよう事業主に求めています。外国人の雇入れと離職の際には、氏名、在留資格、在留期間などをハローワークへ届け出る必要もあります。
書類上の在留資格だけではなく、求人票に記載した仕事内容と実際に担当させる業務が一致しているかも確認してください。
2.業務に必要な日本語力を具体的に決める
「日本語が話せる人」という曖昧な条件では、採用後に認識のずれが生じます。どのような場面で、どの程度の日本語力が必要なのかを整理しましょう。
- 上司からの口頭指示を理解できるか
- 作業手順書や図面を読めるか
- 不明点を自分から質問できるか
- 日報や報告書を作成できるか
- 顧客や取引先への対応が必要か
- 専門用語や安全用語を理解できるか
必要な日本語力は、職種によって異なります。CADエンジニア、ITエンジニア、機械設計、通訳、営業、事務など、それぞれの業務で確認すべき項目を面接前に決めておくことが大切です。
3.仕事内容と労働条件を分かりやすく伝える
求人票には、給与額だけでなく、具体的な仕事内容、勤務地、勤務時間、残業の可能性、休日、手当、昇給、試用期間、転勤の有無などを記載します。
採用したい一心で良い面だけを強調すると、入社後の不信感につながります。厳しい点や努力が必要な点も事前に伝え、本人が理解したうえで入社を判断できる状態を作ることが重要です。
4.教育担当者と相談窓口を決める
入社初日から何を教えるのか、誰が指導するのか、困ったときに誰へ相談するのかを決めておきます。教育担当者を複数にすると指示が食い違うことがあるため、主担当者を明確にすることが効果的です。
また、感覚的な指示や曖昧な表現だけでは、正しく意図が伝わらない場合があります。業務手順を文章や写真、図、動画などで示すことで、外国人だけではなく、日本人の新入社員にとっても分かりやすい職場になります。
5.定着を妨げる生活上の不安にも目を向ける
在留資格によって企業に求められる法的な支援内容は異なります。ただし、法的な支援義務の有無にかかわらず、住居、交通、銀行口座、行政手続、病院、災害時の対応などについて、必要に応じて案内できる体制があると安心です。
生活面の不安は、仕事への集中や定着にも影響します。企業がすべてを代行する必要はありませんが、相談先を伝える、必要な情報を提供する、地域の支援窓口につなぐなど、無理のない範囲で対応方法を決めておくことが重要です。
外国人採用は、採用通知を出した時点で終わりではありません。人材選定、在留資格の確認、入社前の説明、配属、教育、定着までを一つの採用活動として考えることが、長期雇用につながります。
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まとめ|外国人採用は人数ではなく適合と定着で考える
静岡県の外国人労働者数は8万8968人となり、過去最高を更新しました。外国人を雇用する事業所も増え、従業員30人未満の事業所が全体の64.7%を占めています。
この数字からも、外国人雇用が県内の中小企業にとって身近な採用手段になっていることが分かります。製造業だけではなく、医療・福祉、宿泊・飲食、建設、卸売・小売など、幅広い業種で雇用が広がっています。
一方で、外国人労働者が増えているからといって、準備をせずに採用を進めてよいわけではありません。在留資格と仕事内容の適合、日本語力の確認、労働条件の説明、教育体制、相談体制が整っていなければ、企業と本人の双方にとって不幸な採用になる可能性があります。
人手不足を一時的に埋めるためだけではなく、必要な経験や技術を持ち、日本の職場ルールを理解し、長く働く意思のある人材を選ぶことが重要です。同時に、企業側にも、採用した人材を適切に教育し、能力を発揮できる環境を作る責任があります。
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